やがて、夜会のメイン・イベントであるプチ・ファッションショーへ。
「ゲストの方のテーマファッション」の披露です。
「軽井沢夫人のように、テーマつきファッションをしてきてください」
これが夜会のドレス・コードでした。軽井沢夫人はたとえば、「事の成りゆき次第では妖婦に変身しそうな女」といった、テーマのファッションをします。
女性ゲストのみなさんのうち、6名の方のお願いして、それぞれの「テーマ、そしてそのファッション」をご披露いただきました。みなさんにはあらかじめ原稿をいただいていたのですが、それを読みながら私はしみじみと、それぞれの人生に思いを馳せてしまいました。
「傷心にも負けない凛とした旅立ちの時を迎える女、を意識したファッション」のMさん。
「ステキな殿方の専属秘書になる100%準備オッケーな女、を意識したファッション」のKさん。
「代官山に舞い降りた銀座の雪姫、を意識したファッション」のSさん。
「取り戻したいオンナ、を意識したファッション」のTさん。
「恋人と一緒だけれど他の殿方たちのターゲットになりうる女、を意識したファッション」のYさん。
そして、「隠れて鍛える女の露出服、を意識したファッション」の、作家松田朝子さん。
みなさんの美しいお姿と、考え抜かれたファッションに、会場にはため息と、そして、時々、大きな笑い声が広がりました。
6名のみなさんは、大真面目に、自分自身の現在の状況を公にし、それと真摯に取り組んでいる様をあらわにしてくださいました。
こういった姿は、コミカルな要素があり、自分を客観視することにより生ずるユーモアが会場の笑みを誘ったのでしょう。
このプチ・ショーはほんとうに楽しかった。
人が大真面目になっている姿は、はたから見ればコミカルなものなのです。そしてそして、だからこそ、私はそこに、抱きしめたいほどの愛しさを覚えるのです。
当日ファッションを披露するチャンスはなかったものの、ひそやかにテーマファッションをしてきてくださった方々も含めて、深い愛情を抱きました。
こんな気持ち、……同時に多くの女性に対して、深い愛情を抱く……は、新鮮で、もしかしたら私にとっては初めてのことだったかもしれません。
自分自身が驚くほどに特異な感情でした。