1 岡本太郎記念館の手の顔
『顔 Ⅱ』展(2001.1.5~4.2)
「手の顔」油彩、未完 104×90
むくむくと、屹立しつつある性器を、思ってしまった。
皮膚接触によって、ではなく、自発的に、むくむくと膨張し、たちあがる、五つの性器。
そこに描かれているのは、「手」。だから、それは五本の指。でも、見入るほどに、指と性器が重なり、からだの奥が熱くなる。
この「手」に、愛されたい。撫でられたい。こんな表情を持つ手ならば、きっと、肌の欲求を見抜いてくれるだろう。
その展示室にあったのは、10点ほどの、ほとんど小品だった。なのに、そこに満ち満ちているフェロモンときたら!
からだを反転させれば、『幼な神』の両の手の指先がむくっと膨張し、そのひとつおいて左には『顔』、熱を帯びた五本の指がなまめかしくうごめく。
なんか、自分がおかしくなっちゃったのかなあ、と、火照ったからだで渡り廊下を歩き、次の展示室に入る。そこは、一面のガラス窓から外光が入ってきているせいか、少しだけ熱が冷えたように思う。
ふう、と息をつき、窓際に並べられたスツールを見る。奥から、白黒赤緑オレンジ黄青。
オレンジに腰を下ろす。
あ。
なに、これ。
大きな手のひらにすっぽりと包まれたかのような感覚。じんじんとしてくる。
また、おかしくなりそうで、あわてて立ち上がる。係りの人に尋ねる。ええ。デザインしたのは岡本太郎です。やっぱり、と思う。
天才岡本太郎がどんな人だったのか、私は、彼の養女である岡本敏子さんの著書で、初めて知った。そこには天才芸術家のおちゃめなところや溢れる制作エネルギーが、愛情こめて語られていた。
私は岡本太郎の作品から、勝手に「精力旺盛、夥しい恋愛遍歴」をイメージしていて、だから、本の中にそれらの文字が見つけられなかったことが意外だった。性的な話は、ほとんどなかったのだ。けれど私は、著者の目を通して、岡本太郎に、とってもとっても、エロティシズムを感じていた。
無邪気、エネルギッシュ、才能。
キーワードはこの三つかな、と思う。
そういう目で世の男性を見渡せば、やはりこの三つがある人は、みんなそれぞれに、無自覚に魅惑的なフェロモンを振りまいているのだった。岡本太郎の描く、五本の指のように。
